2017年 01月 19日
二次固定 |
先週の大阪大学との合同研修会でも「二次固定」はキーワードのひとつでした。とはいうものの若い歯科医にとって言葉では理解できても二次固定になかなかなじみがないことはセミナー受講者や若手会員のケースを見てもわかります。
自分はこれにはいくつか原因があると考えています。
一つは学生時代にクラウン-ブリッジとパーシャルデンチャーの教育カリキュラムが全く別々に進められていることでしょう。補綴装置によって講座が分れているのは、今も昔も変わりませんが、本来は「部分欠損補綴講座」のようなものがあって、その中でブリッジ、義歯やインプラント、移植といったことが総合的に検討され、教育や研究が行われることが必要ではないかと思っています。医学においても手術方法から診断へとさかのぼることはありえない筋道であり、補綴装置よりは欠損という病態からの視点の方がより合理的であるはずです。
もう一つは保険制度の問題でしょう。10年ほど前に大学を出たばかりの歯科医(City River先生)にブリッジの設計はどうしているかを問うたときに、「どの歯を支台にするかは保険のルールブックで決めている」との答えには唖然としたことがあります。すれ違い咬合など医原性の欠損は不要な歯牙をブリッジの支台として巻き込むことが一因となっていると思われます。また患者さん側の「前歯だけでも固定式に!」といった情に術者が流されてしまうことも原因でしょう。
さて、しかし保険で二次固定となるといくつかの制約や問題もからんできます。実際保険診療で二次固定となると失活歯はコーピングあるいはクラウンとクラスプという手だてしかありません。高径の低いドーム状のコーピングでさえも単純インレーの点数しか頂けず、金属の量によっては赤字になります。また、コアを築造して内冠状のコーピングともなれば保険ルールからも逸脱してしまいますし、ラボの料金も単純インレーどころではすまなくなります。いずれにせよ赤字覚悟の治療になるわけで、これではいくら笛を吹いても踊ることはできません。
支台歯数が少なければテレスコープは優れた補綴手法と思いますが、内冠、外冠を含めてその作製方法は歯科医、歯科技工士ともに熟練しないと難しいものがあり、卒後研修でも学べるところは限られています。また、若い歯科医にとっては治療費用の説明も大きなハードルになると思われます。平均寿命、健康寿命ともに長くなった昨今、二次固定をルーティンにするためにはまだまだ問題も山積のようです。
※画像は昭和一桁生まれの80代の患者さんです。寒い冬の日も靴下も履かずに来院される快活な方でした。上顎はパラの内冠とレジン外冠の二次固定を行った一例です。患者さんの反応もすこぶる良好で、術後対応も簡単になるだろうと一安心だったのですが、装着3ヶ月後の一回目の定期検診を待たずに急逝されたのには驚きを通り越して言葉を失いました。
自分はこれにはいくつか原因があると考えています。
一つは学生時代にクラウン-ブリッジとパーシャルデンチャーの教育カリキュラムが全く別々に進められていることでしょう。補綴装置によって講座が分れているのは、今も昔も変わりませんが、本来は「部分欠損補綴講座」のようなものがあって、その中でブリッジ、義歯やインプラント、移植といったことが総合的に検討され、教育や研究が行われることが必要ではないかと思っています。医学においても手術方法から診断へとさかのぼることはありえない筋道であり、補綴装置よりは欠損という病態からの視点の方がより合理的であるはずです。
もう一つは保険制度の問題でしょう。10年ほど前に大学を出たばかりの歯科医(City River先生)にブリッジの設計はどうしているかを問うたときに、「どの歯を支台にするかは保険のルールブックで決めている」との答えには唖然としたことがあります。すれ違い咬合など医原性の欠損は不要な歯牙をブリッジの支台として巻き込むことが一因となっていると思われます。また患者さん側の「前歯だけでも固定式に!」といった情に術者が流されてしまうことも原因でしょう。
さて、しかし保険で二次固定となるといくつかの制約や問題もからんできます。実際保険診療で二次固定となると失活歯はコーピングあるいはクラウンとクラスプという手だてしかありません。高径の低いドーム状のコーピングでさえも単純インレーの点数しか頂けず、金属の量によっては赤字になります。また、コアを築造して内冠状のコーピングともなれば保険ルールからも逸脱してしまいますし、ラボの料金も単純インレーどころではすまなくなります。いずれにせよ赤字覚悟の治療になるわけで、これではいくら笛を吹いても踊ることはできません。
支台歯数が少なければテレスコープは優れた補綴手法と思いますが、内冠、外冠を含めてその作製方法は歯科医、歯科技工士ともに熟練しないと難しいものがあり、卒後研修でも学べるところは限られています。また、若い歯科医にとっては治療費用の説明も大きなハードルになると思われます。平均寿命、健康寿命ともに長くなった昨今、二次固定をルーティンにするためにはまだまだ問題も山積のようです。
※画像は昭和一桁生まれの80代の患者さんです。寒い冬の日も靴下も履かずに来院される快活な方でした。上顎はパラの内冠とレジン外冠の二次固定を行った一例です。患者さんの反応もすこぶる良好で、術後対応も簡単になるだろうと一安心だったのですが、装着3ヶ月後の一回目の定期検診を待たずに急逝されたのには驚きを通り越して言葉を失いました。
by matsudas1933
| 2017-01-19 17:18
| 学術